8月は戦争に関する番組が多い。8/15に放送されたNHKスペシャル 『開戦 太平洋戦争~日中米英 知られざる攻防~』もその一つだ。同番組のHPでは、「(前略)蒋介石の膨大な日記の全貌が明らかになった。近年公開された蒋の外交史料と合わせて浮かび上がるのは日中戦争の国際化をもくろんだ戦略である。(中略)一方で、日本は多くの選択肢がありながら『引き返し可能地点』を何度も失っていたことも明らかになった。(後略)」と番組の概略を記している。
番組では、蒋介石の日記から、1937年8月勃発した第二次上海事変は、欧米諸国、特に米国に対し日本による中国侵略を訴え、中国の味方につけるための戦略として、蒋介石によって引き起こされた戦争だったと断定している。前月に起きた盧溝橋事件は4日間で停戦協定が成立したが、「国民政府は日本軍による強力な一撃を加えるだけで屈服し、早期講和に持ち込める」という「対支一撃論」が大勢を占め、近衛内閣は派兵を決定し、同年12月には南京を陥落させ、泥沼の日中戦争へと突入していく。一方、蒋介石は、最終的に重慶へと避難し臨時政府を樹立し持久戦に持ち込む。近衛文麿首相はトラウトマン工作に基づいた和平案提示したが、蔣介石はこれを拒否。「爾後(じご)国民政府ヲ対手(あいて)トセズ」というあの近衛声明で和解の可能性は潰えることになる。
蒋介石の日記から、蒋介石は、単独では日本に勝てないが欧米諸国、特に米国を引きずり込めば勝てると踏み、米国内において工作費をふんだんに使い、極東情勢における日本の非を米国のいくつかの機関に語らせている。これに対して、太平洋戦争に突入してからの日本のスローガンは「鬼畜米英」と、盧溝橋事件後に日本の新聞も書きたてた「暴支膺懲(ぼうしようちょう・横暴な支那を懲らしめよ)」である。
まさに、日本の戦略のなさだけが際立つ。目先のことに感情移入をして情緒的に精神論を掻き立てる。完膚なきまでの敗戦経験をした日本が、まさか現代においてもそのようなことはないだろうと思っていたが、菅首相の「目先のことを一生懸命やる、、、」という発言を聴いていると、やはり日本には戦略はないのかと思えて仕方がない。
中国など一撃で倒せるという根拠のない甘い見通しと、暴支膺懲という驕りは、コロナへの甘い見通しと、世界一といわれてきた日本の医療体制への驕りに置き換えることは出来ないだろうか。まだ、コロナとの戦いは続く。今からでも遅くはない。すぐにも大規模施設を使った野戦病院をつくり、医療を受けられずに死に至るという事態を収拾すべきだろう。これは、より良き選択をということではなく、特措法の内容からみても国家・自治体の責務であると私は思う。