自民党総裁選が、事実上の首相選びであることは重々承知している。しかし、ほとんどの国民は蚊帳の外に置かれたまま、モヤモヤ感満載でこの2週間を過ごしたに違いない。それにしても今回は、自民党の中でもこんなに考え方が違うものかと少々驚いた。もちろん、基本は保守だから大枠の価値観は同じなのだろうが、野党の党首にしたいくらいの候補もいた。裏返せば、野党のみじめさが際立った2週間でもあった。
さて、私たち旅行会社は、新首相に海外旅行再開への道筋を示してほしいと願っている。兎に角、10/1から入国後の自主隔離の日数が14日間から10日間に減らされるものの、これでは海外旅行は事実上不可能である。そもそも、水際対策の目的は何か。日本に上陸していない未知の感染症を防ぐためだと私は解釈しているが、実際の対応には首を傾げてしまう。
自主隔離は新型コロナウイルスそのものの侵入を水際で食い止めるのが目的だったが、変異株の登場で、それらの新しいウイルスを防ぐことに変わったはずだ。何故なら、既に日本で流行してしまっている株を防いでも大きな意味はないからだ。
実際、厚労省は「水際対策上特に対応すべき変異株」と「従来株を含むそれ以外」に分類している。特に対応すべき8系統の変異株とは、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、イータ株、イオタ株、カッパ株、ラムダ株、ミュー株である(系統名省略)。その上で、44か国を「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」に指定し、これらの国からの入国に際しては、検疫所が指定する場所で3日間の待機を必要としている。
ところが、現在は、全ての入国者に対し出国前72時間以内の陰性証明書の取得と入国時の検疫での抗原定量検査、14日間の自宅等待機・公共交通機関不使用要請等を行っている。しかも、日本入国上陸申請日前14日以内に160の国・地域に滞在歴のある外国人については、「特段の事情」がない限り上陸を拒否している。
「特段の事情」とは以下の5つのケースだけである。日本への留学が決まった学生が入国できないのはこのためである。
- 再入国許可
- 日本人・永住者の配偶者又は子の新規入国
- 「外交」又は「公用」の在留資格を有する又は取得する者(例えばワクチン開発の技術者)
- 入国目的に公益性が認められる者
- その他、人道上の配慮の必要性がある場合
結局、経口治療薬が登場し、インフルエンザと同じように近所の病院で診察が可能となり致死率もインフルエンザ並みに下がることで、感染症法上の2類相当(エボラ出血熱などと同じ扱い)からインフルエンザと同じ5類に変わらない限り何も変わらないのかもしれない。脚気における日本陸軍と海軍の対応の違いを思い出す。森鴎外は、生涯、脚気の原因が白米食にあることを認めなかったそうだが、今日でも、そうした“権威”といった壁が存在するのではなかろうか。
岸田新総裁には、目指す未来に向かって今がどの位置にあるのか、今やっていることは、どんな未来のためなのか。全てをしっかり語ってほしいと思う。