6月16日は保険の話で明け暮れた。きっかけは、「1,500万円で足りるのか?」という、あるスタッフの疑問からだった。
今まで弊社では、トレッキング、乗馬、高所滞在、自転車、スポーツなどを含むツアーは、治療・救援費用が1,500万円以上補償される保険に加入いただくことを強くお願いしてきた。弊社は過去に4回緊急ジェットを飛ばしているが、いずれの費用も1,000万円程度だったし、その値段はずっとほぼ変わらなかったからだ。しかし、最近の海外の物価高は異常だし円安でもある。至急、どうするかの検討が社内で始まった。
早速、保険会社に最近の実例を調べてもらったところ、昨年、ミャンマーから成田へ医療用緊急ジェットを飛ばしたら、なんと3,100万円もかかったとの報告が来たのである。ミャンマーもそうだろうが、ネパールやモンゴルには医療用ジェットそのものがない。どこから飛ぶかというと、その時に飛べる国から飛ぶ。医療用緊急ジェットは、緊急を第一義としているため、どこの国からどの国へ飛ぶか事前には分からない。
アジア諸国はもちろんだが、オーストラリアやニュージーランドも範囲に入る。飛ばす先(移送先)は、シンガポール、バンコク、香港、北京、東京など治療が可能な医療が受けられる都市だ。弊社が初めて飛ばした時は、オーストラリアから北京経由でウランバートルへ飛び、移送先は成田だった。チベットのラサから飛ばした時は、シンガポールから飛び移送先は香港だった。
私の経験では、保険会社に事故報告をすると、事故対応を実際に行うアシスタンス会社へ連絡がいくことになる。アシスタンス会社の契約医師と、患者が入院している現地の病院の医師が国際電話で状況を交換し、海外への移送が必要と判断すれば医療用緊急ジェットの手配が始まる。その際、移送費用が幾らなのか、依頼主即ち弊社へ連絡が来る。その値段を承諾して初めて飛ぶことになるが、支払いの保証は保険が適用されるということが前提になる。だから、保険の補償額が医療用緊急ジェットを飛ばすために足りているか否かは、飛ぶか飛ばないかの分かれ目になり、それは命の分かれ目にもなる。それくらい海外旅行保険は必須である。
治療・救援費用が無制限に設定されたセットプランであれば大丈夫だが、特にネット保険の場合は要注意である。ネット保険は無制限のタイプが用意されていなかったり、治療費用、救援費用に分けた上で「治療費用」の上限額が低く定められているものがあるからだ。医療用緊急ジェットは治療費用のうちの移送費用に当たる。もはや1,500万円程度では足りない。この夏のツアーにご参加くださる皆さんも、不足が予想されるお客様には担当者から連絡がいく予定だ。遅くなってしまったことをどうかご容赦願いたい。
普通の観光旅行であっても、交通事故もあれば、脳卒中などの重大な疾病だってある。米国でICUに入ったら1,000万円、2,000万円などあっという間に消えてしまう。支払いが保証されなければ治療がそこで止まる場合だってある。ずっと申し上げているように、海外旅行保険では治療・救援費用が最も重要である。生きるための保険だからだ。私は、どんな旅行でも無制限プランに入ることにしている。こんなことを書くと保険屋の手先かと怒られる方もいらっしゃるが、そうではない。是非、皆さんも、保険の重要性を再度、考えて頂きたい。