セーヌ川の水質

男子トライアスロンが7/30から翌日に延期されたことで、セーヌ川の水質汚染が俄かにクローズアップされた。その後もオープンウォーターなどの競技も行われたが、水質が基準値を満たした日は、検査をした10日間の内2日、20%しかなかったという。

私は、セーヌ川がそんなに汚れていることを全く知らなかった。環境にうるさい欧州では、もうとっくに河川は綺麗になったと思い込んでいた。ロンドンを流れるテムズ川も一時は鮭が遡上するまで水質は改善したようだが、今はかなり酷い。

セーヌ川は、なんと1923年からずっと101年もの間、遊泳禁止になってきた。今回のオリンピックのために、およそ14億ユーロもかけて水質改善を図ったが、どうも思うようにはいかなかったようだ。

パリといえば、ナポレオン3世の第二帝政(1851年~1870年)下で、セーヌ県知事ジョルジュ・オスマンによって大改造が行われ近代都市として整備された。フランスは英国に遅れること約70年、1830年に産業革命がはじまり1870年代に完成している。パリは、それと共に大都市化したが、道路は狭く、その道路の中央に溝が切ってあって、道路に捨てられた糞尿がそこを流れてセーヌに流入するが、溝は詰まって悪臭を放つ。不衛生この上なく、1832年にはコレラの大流行をまねき10万人以上が命を落としている。オスマンは、道を広げ、上下水道を整備しパリを近代都市へと導いた。

しかし、今も合流式の19世紀の古い下水道が残っており、大雨が降って水位が上がると生活排水が下水処理場にたどり着く前にセーヌ川に流れ込んでしまう。英国でも、大雨などによる下水の氾濫を防ぐために、水道各社は未処理水を川や海に排出することを認められているが、異常気象からか大雨が増え、河川への排出が激増しテムズ川の汚染が深刻化しているというわけだ。

そういえば、2021年の東京オリンピックでもお台場のトライアスロン会場の水質の悪さが大きな問題になった。日本は、近年、河川が大分きれいになったと言われていて、河川の汚染は過去のことのように思われている節がある。実はそんなことはない。隅田川には多くの屋形船が浮かんでいるが、川は観光素材としての価値も高い。訪日客が激増している今こそ、本当にきれいな川を目指してはどうだろうか。

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