ラダックの曼荼羅!壁画! 見応えランキング!
曼荼羅(マンダラ)とは、仏教(特に密教)の世界観を視覚的に表したもの。如来や菩薩、明王や天など仏教の仏たちが一定の規定に基づいて配置されています。修行僧たちは曼荼羅を見つめながら、自分がその中に入り込んだ様子を瞑想(観想)し、仏と一体になることを目指すのです。そのため曼荼羅はお寺の中の曼荼羅堂と呼ばれる狭いお堂や、洞窟などに穿たれた瞑想窟の壁に描かれていることが多いのです。
特に北インドのラダックには、文化大革命などで寺院や寺宝が壊滅的に破壊された中国領のチベットではほとんど見られない古い壁画や仏像が数多く残されていて、見所の1つとなっています。
今から約1000年前にこの地で活躍した大翻訳官(ロツァワ)リンチェン・サンポは、当時の仏教の先進地域だったカシミールで修行し多くの仏師、職人を連れ帰り、多くの寺院を創建しました。実際の創建はのちの時代のものも多いのですが、およそ1000年から数百年のあいだ村人たちに守られた小さなお堂やお寺には、時を越えて輝きを放つ曼荼羅がひっそりと残されているのです。
そこで、特に見応えのあるラダックの壁画を、担当の中村が個人的にランキングにしてみました。
第3位 グルラカン (ピヤン)
ピヤンはラダックの中心であるレーの「お隣」の谷。ピヤンゴンパという大きなお寺もある美しい村です。
グルラカンは、そのピヤンの村はずれの山の斜面に建っている小さなお堂。は村人が管理していて、薄暗い内部には13~14世紀ごろに描かれたガルーダやイダム(守護尊)、大黒天など密教の仏や壁画で埋め尽くされています。道内の暗さでおどろおどろしさは5割増しです。お堂への登り降りはちょっときついですが、一見の価値ありです。
第2位 ニダプク (サスポル)
ニダプクとはニマ(太陽)、ダワ(月)、プク(洞窟)が縮まった言葉で日本語でいうと「日月洞」とでも訳すべきでしょうか? レーから西に60㎞ほど離れたサスポル村の北側の崖に開かれた石窟寺院。現在は廃墟で、寺院というよりお籠り修行するお堂というほうがぴったり来ます。5つの洞窟が確認されているそうですが、5号窟はほぼ崩壊しています。
激しい密教の瞑想修行をしたであろうお堂の中は、びっしりと密教壁画で埋め尽くされていて、修行僧の執念のようなものを感じます。今も修行する僧侶がいるようで敷物やお供え物が置かれています。
第1位 アルチ・チョスコル (アルチ)
栄えある第1位は、やはりアルチ・チョスコル(アルチ寺)。
アルチはレーの西70kmほどの場所にある小さな村です。この静かな農村には、ラダックのみならず全チベット文化圏でもトップクラスに貴重で、しかも美しい仏教美術が残されています。チョスコルとは「聖域」という意味で、アルチ・チョスコルは三層堂(スムツェク)、大日堂、翻訳官堂、文殊堂の主に4つのお堂で構成されています。
なかでも三層堂は、入り口以外の三方に5mほどの弥勒菩薩、観音菩薩、文殊菩薩の三体の菩薩像が置かれ、その下衣には11世紀のカシミールの王宮風景や釈迦の伝記が、背後の壁面には青を基調とした千仏がカシミール様式で描かれています。特に文殊菩薩像の脇に描かれた美しいユム・チェンモ(般若波羅蜜多仏母)はアルチ寺が販売している写真集の表紙になっているほどで、写実的で立体感のあるカシミール様式の女神は、圧倒的な存在感を放っています。
大日堂は、大日如来を中心に5体の古い仏像が奉られ、立体マンダラを構成している。壁画は巨大な7つの密教系のマンダラで、いずれもグゲ様式で描かれています。(現在はいずれも内部撮影不可)
またアルチ村にあるツァツァプリというお堂にも美しい金剛界曼荼羅などが残されていて見応えがあります。
現在では中国のチベット自治区でも、文革などで破壊された密教系の壁画が修復されたり、新たに描かれたりして、あちらこちらで目にすることができますが、約1000年前から残されている仏教の神様、仏様に是非会いに出かけていただきたいものです。
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