もっと魅力を知ってほしい!あの場所この場所
ジョムソンからムクティナートへ

map

世界遺産に代表されるいわゆる観光名所は、その国や地域のほんの一部でしかありません。広く知られる観光名所が良くないというわけではありませんが、それにもまして魅力に溢れる「光をあてたい」場所や物事がたくさんあるということです。そんな「あの場所、この場所」をご紹介します。初めてでも、2度目、3度目の国でも、訪れればきっと確かな光を感じることができるでしょう。

ラオスキルギストルコチベット文化圏ブータン


カグベニ村
旧ムスタン王国とムクティナートへの分岐、カグベニ村

ポカラから小型飛行機で約30分、北方へ。雄大なヒマラヤの雪山に囲まれたジョムソンに降りると、その地面の乾いた感じ、空気がネパールとは全く違うことに気づくでしょう。そう、みなさんはすでにチベット世界に入っているのです。というより、中国領となり、近代化激しい中央チベットでは残されていない、チベットの原風景が広がっていると言ったほうがいいかもしれません。


ジョムソン空港
間近に7,000m級の山が聳えるジョムソン空港
ヒンドゥ教の大聖地ムクティナート
ヒンドゥ教の大聖地ムクティナート
(写真提供:稲葉俊英様)

ジョムソンからムクティナートへのルート上には、小さな村が点在しています。最初の大きい村はカグベニという名の村です。その中心には民家に護られるようにして僧院があり、今でも村人たちの信仰の中心・世界の中心として生きています。そして民家に立ち寄ると、何か不思議な物体にも出くわすことでしょう。魔除けの人形や悪霊祓いのときに使われた護符などです。このような古代的な遺物はチベット本土では見かけることが少なくなっていますが、チベット文明の「辺境」であったこの場所には、今でも当たり前のように残っています。このカグベニのすぐ北側には、あのムスタン王国が広がっていたことを思い出してもいいでしょう。


カグベニから東に歩んでいくと、登り坂になります。すこしきついですが、美しい雪山を拝みながら行くと、疲れは不思議と吹き飛んでしまいます。(これは本当です!)そして数時間後にムクティナート。チベット文化圏と思いきや、なんとここはヒンドゥー教の大聖地なのです。まるで飛び地のようにヒンドゥーの影響があるのに驚かされますが、北方の雪山に聖地を仰いだ、昔のヒンドゥー教徒たちの強い信仰心が感じられます。このムクティナート寺院の裏側に流れている水は、ガンジス河の源流となっているという信仰もあるのです。



日本発着の日数目安:9日間
ベストシーズン:9月~5月

map

風通信」47号(2013年4月発行)より転載