ランタン谷って?
イギリスの探検家ティルマンに「世界で最も美しい谷」と紹介されたランタン谷。夏には400種類を超える高山植物が一斉に咲き乱れるため、別名「花の谷」とも呼ばれています。夏は雨期でどんよりとした雲が空を覆い雪を被った神々の峰は、あまり姿を見せてくれないため、花の時期の企画がほとんどない(出来ない?)のが残念です。目的を山ではなく高山植物にスポットをあて「花の谷」を一度味わってみたいものです。ただ、毎日雨具を装備しての山行は、肉体的にも精神的にもさすがに疲れますよね。
さて、ランタン国立公園ですが、ネパール中部にあり、首都カトマンズの北方約70km、中国(チベット)との国境に位置しています。また、ネパールで最初に指定された国立公園でもあります。このエリアは「ネパール3大トレッキングエリア」の一つと、ガイドッブックなどでよく紹介されていますが、クーンブ(エベレスト街道)山群やアンナプルナ山群と比較すると、まだまだマイナーなエリアと言えます。「せっかくヒマラヤへ行くなら、世界最高峰エベレストが見たい」、「雑誌の写真で見たアンナプルナ山群と湖が創る美しい景勝地・ポカラへ行きたい」という方が多いのは、至極当然のことと思います。
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では、ランタンの魅力とは?
エベレスト峰をはじめ、8千メートルを越える有名スター選手のような存在はいませんが、他のエリアと比べて山や氷河をかなり近くで眺めることが出来るのが特徴です。また、エベレスト方面やアンナプルナ方面の登山口までは国内線で移動するのが普通ですが、ランタンエリアは登山口の集落まで車で移動するため、フライトの遅延や欠航を心配する必要がありません。ご存知ない方もおられると思いますが、実はこれ、かなり重要でして、私も過去に何度も痛い目に遭いました。1日だけならまだしも、3、4日間、欠航ってこともしばしば。そうなると当初の旅程は完全に崩壊し、本来の目的地まで行きたくても時間に余裕がなくなってしまい、諦めるしかなくなります。高山病や体力不足で断念するのでしたらまだしも、、、。ですので、比較的順調に日程をこなせるという点も魅力の一つと言えます。そして、国境を越えて住み着いたチベット民族が多いため、トレッキング中にその文化に触れることができることも、人々を惹きつける要素となっているのではないでしょうか。
ヒマラヤに息づくチベット世界
話は逸れますが、1959年の「チベット動乱」以降、命がけでヒマラヤ山脈を越えてインドやネパールに亡命する人が後を絶たず、現在ネパールには15,000とも20,000人とも言われるチベット難民が生活しています。カトマンズ、ポカラの都市部はもとより、ヒマラヤ山岳地帯周辺にも数多くの集落が点在していると言われています。ある程度、安全は保障されているものの、長年住み続けても、また、生まれ育った人間であっても人権が認められなかったり、政治活動も禁止されるなど、厳しい環境を強いられながら生きています。そんな歴史の狭間で暮らしていることを感じさせず、平和でゆったりとした時間が流れており、チベット色が濃いからなのか、エベレストやアンナプルナ方面とは明らかに異なる、何とも独特で不思議な感覚にさせられることがランタンらしい魅力と感じます。トレッキング中は、民族衣装を纏った村人たちと出会い、チベット餃子(モモ)やチベット風揚げパンなどを味わい、真言(マントラ)や経文を掘ったマニ石、チョルテン(仏塔)、真言を刻んで築かれた壁メンダン、ヒマラヤの景色に映える5色(青・黄・白・赤・緑)の祈祷旗タルチョなどチベット世界を感じることができます。

洗い物をする村人たち

メンダン

祈祷旗とマニ石

チベット餃子モモ

道中に出会った子供達
余談ですが、“チベット”と聞くと、いつも思い出す映画があります。スイスアルプスの難攻不落の絶壁と言われていた「アイガー北壁」を初登攀したハインリヒ・ハラーというオーストリアの登山家が7年間チベットで過ごし、若き日のダライ・ラマ14世との交流を描いた実体験に基づいた「セブン・イヤーズ・イン・チベット」という映画です。当時のチベットは誰も知り得ない未知で神秘的で禁断の地だったことを考えますと、想像するだけでロマンを掻き立てられます。映画の舞台はネパール(ランタン)ではなく、インドからヒマラヤを越えてチベットへ渡るという内容ですが…。
ランタン谷トレッキングについて
近年はジープ道が急速に整備されたお陰で、トレッキング開始からキャンジン・ゴンパ(3,730m)まで、片道わずか2泊3日とコンパクトな日程で行けるようになりました。基本的に川沿いを歩き、あまりアップダウンがない歩きやすいルートです。前半は樹林帯の中、森林限界を越えると徐々に風が強まり、高所へ来たなと実感が沸いてきます。村人たちの素朴な生活を垣間見たり、ラバの隊商とすれ違ったり、ヤクが草を食む姿など、今の日本には失われてしまった風景ではないでしょうか。
冒頭でランタンには有名スター選手はいないと表現しましたが、最終目的地のキャンジン・リ(4,550m)からは、秀峰ランタン・リルン(7,223m)の全容をはじめ、ヒマラヤ襞が美しいガンチェンボ(6,387m)やランシサ・リ(6,420m)などの峰々、そして目の前のリルン氷河が創り出した360度の絶景を楽しむことができます!

歩き始めは樹林帯の中を歩きます

ラバの隊商

ガンチェンポ峰(6,387m)

キャンジン・リ(4,550m)
地元の人たちの生活道を歩くため、特別な技術や装備も不要です!
近年、日本の若い役者が訪れたことでも話題になっているランタンエリアへ、ぜひ出かけませんか!
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樹林帯を抜け氷河に迫る!
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