ネパール見聞録を数回に分けて報告します……とぶち上げたのは良いものの、前回の更新から早くも1ヵ月以上。
忙しさにかまけて筆が遅くなるのは予想していたため、当初から掲載回数「数回」のふんわりとした逃げを打っていたものの、さすがにネパール航空の搭乗レポートとネパール入国の最新情報の2回だけでフェードアウトしては、ネパールファンのみなさまに合わせる顔がありません。もう少し頑張って連載する所存ですので、気長にお付き合いいただければ幸いです。
さて、今回はリピーターのみなさまが気になっているであろう、あのホテルのその後を記したいと思います。
そういえば風ダルバールはどうなったの?
無事にネパールへ入国し、3年ぶりのガイドさんと合流。感激の再開もそこそこにカトマンズ市街地を目指します。
コロナ前に出張時の定宿としていたのは、その名も「風ダルバール」。風の旅行社ネパール支店の社長プリスビーが全身全霊を傾け、約70年前に建てられたラナ家(1846年~1951年の約100年にわたってネパールを支配した宰相家)の邸宅を改築し2014年にオープンさせたヘリテージホテルです。
2015年のネパール大地震の際には地域の方々の避難所としても機能し、古い建物ながらも立派に役目を果たしてくれました。私たちの心の拠り所でもあったホテルが、このコロナ禍でどうなってしまったのか? 不安を胸に訪れてみると……。
あった! ありました! 佇まいはコロナ前とそう変わりませんが、ちょっとファサードに違和感が。ホテル名が書かれた赤い看板をよく読むと、HUKUM DARBAR……? そう、風ダルバールはコロナの影響によりプリスビーを含む3名の共同オーナー制に移行しており、名称も「フクムダルバール」へと変更されたのです。
もちろんそのことは事前に聞いていたものの、気になったのはホテル名よりサービスの質が落ちていないかどうかという点。実際に宿泊してみないことには、お客様に自信を持って勧められません。しかし、レセプションで迎えてくれるスタッフたちのにこやかな笑顔を見て、すぐにそれが杞憂だったことを理解しました。
朝食に美味しい日本食を食べられること、薫り高いネパールコーヒーを楽しめること、テレビ撮影に使われるほどの伝統建築に泊まれることなど、このホテルの優れるポイントを挙げればきりがありません。
そんな中で、以前より私が感じている最たる美点は「スタッフの対応」。フロントスタッフをはじめ守衛さんやメイドさん、レストランのボーイさんなど、ここで働く人々の全員が、外国人がイメージする“やさしいネパール人”そのままの笑顔で迎えてくれます。
滞在3日目。(会社には内緒ですが)私はひどい二日酔いのため、午後遅い時間までベッドの上で動けずにいました。ちょっとウトウトしてはトイレに行き、起きては水をガブ飲みするというルーティンを何度繰り返したかわかりません。すると、とあるタイミングで奇妙な現象に気がつきました。覚醒するたびベッドサイドに置かれた備品が増えていくのです。
ハーブティー、バナナ、謎の薬、リンゴ、ミネラルウォーター、コーラ、ビール(!)、カミソリ(!?)……。きっと気を揉んだ彼らが、飲み過ぎに効きそうなあらゆる品々を差し入れてくれたのでしょう。
死人のような寝顔を見られてしまったのはちょっと恥ずかしい(※)ものの、わざと寝ているときを選んで届けてくれるやさしさに嗚咽が止まることはありませんでした。おえっ。
※私がホテルスタッフと旧知の間柄だからです。一般客の部屋へ勝手に入ることはありません。
ちなみに「フクム」とは、高貴な方が下々の者に指示を出すことを意味するそうです。一方、ホテルのスタッフから“上から目線”は全く感じません。
「風」という名前が消えてしまったのは寂しい気もしますが、プリスビーの理念やコダワリはソフト面でも生き続けています。フクムダルバール、今後ネパールへ行かれる方にも自信を持ってお勧めします。
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藤谷 法圓2022.12.22 08:45 pm