添乗ツアー名 ● ラダックの民家で迎える「2つのお正月」と「氷の回廊・チャダル」体験7日間
2016年12月28日(水)~2017年1月3日(火)
文・写真 ● 川上哲朗(東京本社)
『北インドのヒマラヤ山中に位置するラダックは、標高3,500m前後。真冬は厳しい寒さが続きますが、そんな自然環境だからこそ、人々は明るく力強く助け合い、家族の絆を大切に暮らしています。暖かい空気を逃がさないよう工夫して建てられた民家の扉をくぐれば、ホームステイ先の家族が温かな笑顔で迎えてくれます。』
というのが今回のツアーの売り文句。“厳しい寒さ”だという冬のラダックで、一体どんな出会いが待ち受けていたのでしょうか?
まずは首都デリー、そしてラダックへ
成田から日系航空会社の直行便を利用し、インドの首都・デリーへは夜に到着。早速、夕食にインド料理をいただいた後、翌朝の移動に備えて早目に就寝します。そして夜も明けきらぬ午前三時半、なぜだか朝っぱらから元気の良い「ナマステ!」というモーニングコールに叩き起こされ、眠い目をこすりながら再びデリー空港へ向かいます。
エア・インディア機は順調にフライトを続け、午前七時半、無事にラダックの玄関口・レーへ着陸しました。空港にボーディングブリッジはなく沖止めになるため、タラップを降りるといきなり氷点下の風の洗礼が待っていました。いやぁ、デリーとの気温差はなかなか厳しい!
早速、五体投地でカメラを破損するメンバーも…
このパンが温かくて絶品!
まずはレー市内観光へ。中国チベットのラサ中心部にあるジョカン(大昭寺)のラダック版「レー・ジョカン」、様々な文化や宗教が混在するラダックを象徴するようなモスク「ジャマー マスジット」を観光し、ムスリムの方が営業しているパン屋さん(ナンのような窯焼きパン)で大人の買い食いを楽しみつつ旧市街を散策しました。
ホームステイでラダック文化を深く知る
今回のホームステイは二棟のお宅(母屋&分家)に分かれる事になりました。ホストファミリーはとても優しそうな方々で、初対面の我々を素敵な笑顔でお出迎えしてくれます。
ストーブの良く効いた部屋で、お茶やお菓子をいただいた後、高度順応がてらニンム村の散策へ出発。村裏手のゴンパ(お寺)やチョルテン(仏塔)を見学しましたが、チョルテンには古そうな壁画が大変良い状態で残っていました。
ホストファミリーのお兄さん家族
到着早々くつろぎすぎているツアーメンバー
運が良く2016年の12月29日はラダック歴(かつての王様が出陣日をラダックの元旦と定めたらしい)の大晦日だったため、見世物ではなくリアルな年越し行事を見学することができました。
窓辺にバターランプの灯明をお供えし、メトという松明で悪霊を払う儀式を見学させていただきましたが、家長であるお父さんに教わりながら儀式を執り行うお兄さんの様子は、インド内のチベット文化圏における文化の伝承を感じさせられるものでした。
大晦日には窓辺に灯明を灯す
元旦にダルシンを新しくする様子
また、元日の朝にはみんなで近くのゴンパに初詣へ行き、ダルシンという幟を新調したり、ツァンパ(麦焦がし)を天に投げて祈る行事も体験させてもらいました。なお、ここでは日本から持参したお線香が大活躍。今度偉いお坊さんが来る時に使ってくれるそうです。
凍った川でチャダル体験
日が出て暖かくなってきた頃、ザンスカール川の上流を目指し出発。途中の川が凍っている箇所で、今回のツアーの大きな目的である「チャダル体験」をする事に。
ところでチャダルって…?
厳冬期のみ現れる氷の回廊「チャダル」。冬はラダックからザンスカールへ繋がる陸路が閉ざされ、移動手段は凍ったザンスカール川を歩くしかありません。古くより多くのラダック、ザンスカールの人々が、唯一の移動経路として利用してきました。
チャダルについて詳しくは下記ページをご参照ください
冬のラダックに現れる氷の回廊「チャダル」を体験
https://www.kaze-travel.co.jp/tibet_kiji047.html
ザンスカール川は全面結氷している訳ではなく、ところどころで冷たそうな群青色の水流が顔を出しています。もちろん、万が一落水したら大変なことになるでしょう。何度もチャダルを往復しているガイドとサブガイドが先行し、ストックで叩いて安全を確かめつつ慎重に歩きます。
滑った転んだと大はしゃぎです
謎の骨をゲット!
凍ったザンスカール川にて
はじめは恐る恐る足を踏み入れていたメンバーも、慣れてきたらこの様子。氷上は思ったより寒くはなく、スケートやダンスの真似事をしたり、川べりに落ちている変わった形の石や動物の骨を集めたりと、大変盛り上がったチャダル体験となりました。
車に戻った一行は、更にザンスカール川を北上し、レストランや売店もない小さな集落「チリン」へ。古の時代にネパールより招聘された技術者の末裔が今でも鍛冶屋を営んでいる村を散策し、実際に真鍮の食器を作る所を見学させてもらいました。お父さんが作った皿やスプーン、指輪、水差しなど、良いお土産も購入できました。
とても静かなチリンの集落
エキゾチックな顔つきの少女
危険なハッパ&オープンカー体験
チリンからホームステイ先へ帰る道中、工事現場に差し掛かったところで立ち往生。どうやらダイナマイトのハッパに失敗し、大きな岩が道路を塞いでしまったのが原因だそうです。観光客に通過してもらうため、作業員達は暗くなるまで撤去作業を続けてくれましたが、結局、この日は車が通れるまで復旧されることはありませんでした。
崩落箇所を歩いて渡る
こんな一期一会の出会いも“旅”ならでは
仕方ないので崩落箇所を歩いて渡り、作業員用トラックの荷台に便乗してニンムを目指す事に。足元には無造作に転がるダイナマイト。そして頭上には満点の星空。みんなで“上を向いて歩こう”を熱唱しつつ、「まさかラダックに来てオープンカーに乗れるなんてね~」などと冗談も飛び出し、これはこれで忘れられぬ体験となりました。
ラダックの仏教美術を満喫!
カシミールから伝播された独特な様式の壁画が見どころの一つであるラダック。チャダル体験やホームステイを終えた後は、レーのホテルを拠点に上ラダックと下ラダックにひっそりと残されている“文化財級”の秘仏を巡りました。
サスポル・ニダプクゴンパ
アンズの産地として有名なサスポル。北側にある洞窟内に壁画が残されています。風化によって崩落が進んでいますが、中央アジアやヨーロッパの香りを感じる壁画は必見です。
“放置”といいたくなる状態ですが
実に見事な壁画が残っています
アルチ・チョスコルゴンパ
「三層堂」が素晴らしい。残念ながら建物内は撮影禁止ですが、非常に美しいグゲ様式(グラデーション豊富で肉感的な仏画が特徴)の壁画には圧倒されます。
チョルテン内部にもグゲ様式の壁画が
部分拡大
シェイ・ゴンパ
昔はお城が建っていた小高い丘の上に位置しており、展望が良いゴンパです。近くに物凄い数のチョルテンが残っていますが、これは王国時代に罪を犯した人に懲罰として建てさせたものなのだそうです。
岩山の上に建つ古城
これはやらないと。シェイでシェー!
ティクセ・ゴンパ
ラサのポタラ宮のような荘厳な姿した大きなゴンパです。今回は堂守さんが不在で本堂は開けてもらう事ができませんでしたが、有名な美しい弥勒菩薩像を見ることができました。
僧院が集合したゲルク派のゴンパ
優しい顔をした弥勒菩薩が迎えてくれます
スタクナ・ゴンパ
インダス川に架かる車幅ギリギリの吊橋を渡ってゴンパへ至ります。ブータン系の寺院だけあり、彫像などがちょっと独特の雰囲気です。
お勤めに励むスタクナ・ゴンパの僧侶たち
繋がれていたロバと遊ぶガイドのスタンジン
ヘミス・ゴンパ
「年中混雑していて聖地の雰囲気はなくなった」とするガイドブックもありますが、今回の参拝客は我々だけ。ラダック王家の菩提寺というだけあり、大変品格のある山寺です。
ヘミス・ゴンパからの眺め
そしてなぜかまたシェー!
ラダックの秘仏について詳しくは下記ページをご参照ください
添乗報告記●ラダックの秘仏大公開! 川﨑一洋さんと往く・仏教美術巡り
https://www.kaze-travel.co.jp/tibet_tenjo023.html
そして再びのデリーへ
4泊5日という短いラダック滞在を終え、一路デリーへ戻ります。
ゆっくりシャワーを浴びるより、せっかくならデリー市内を観光したい欲張りツアーメンバー。急遽、夕食まで休憩する予定だったホテルをキャンセルし、インド都市部の宗教観や生活に触れるためヒンドゥ教とシーク教の寺院へ潜入することになりました。
シーク教の寺院に入る際は髪を隠す
最後の観光はインド門へ
もちろん夕食も普通の観光レストランでは満足できず、現地パートナーの社長宅にてホームパーティーを開催する事に。デリー市内へ同行してくれた日本語ガイドはもちろん、日本語がペラペラの社長やその弟さんもご一緒でしたので、当然盛り上がらない訳がありません。
インドビールで乾杯したあとは、奥さんにロティと呼ばれる薄焼きパンの作り方を教えてもらい、『最後の晩餐』として美味しいヤギ肉のカレーと共にいただきました。
ホームパーティーの様子
右手の円いものがお手製のロティ
ツアーを振り返って
日本発着7日間という短い日程でしたが、高所環境の厳しさと自然の美しさ、文化を伝承する事に対する誇り、そしてラダックの人々の優しさと家族の絆を味わうことができる濃密なツアーでした。
『ツアーの売り文句』に偽りはありません!!
ナマステインディア! また来ます!